十九日午後二時半ごろ、東京都渋谷区松涛一、女性専用温泉施設「渋谷松涛温泉シエスパ」の従業員休憩室や温泉くみ上げポンプがある「Ｂ棟」で爆発があった。Ｂ棟は鉄骨の骨組みを残し大破した。

　Ｂ棟で休憩していた女性従業員五人のうち日詰（ひづめ）真里さん（５１）＝東京都世田谷区池尻＝と藤川広美さん（２２）＝同江戸川区、札幌市出身＝の二人が死亡。約四時間後にがれきの下から救出された千財（せんざい）明菜さん（２３）＝同新宿区高田馬場、富良野市出身＝も間もなく死亡が確認された。

　従業員の北村直美さん（３５）と池田君江さん（３２）の二人、付近を通行中の男性（２８）ものどのやけどなどのけがをした。ほかに路地を挟んだ営業中の本館「Ａ棟」にいた従業員ら五人が、耳や目などの痛みを訴え現場で手当てを受けた。

　温泉を地下からくみ上げる際にわき出る天然ガスが棟内に充満、何かが引火、爆発した可能性があり、警視庁捜査一課と渋谷署はガスの処理過程に問題がなかったか、業務上過失致死傷容疑で関係者から事情を聴いている。東京消防庁は天然ガスはメタンとみている。

　調べでは、Ａ棟と別棟のＢ棟は地上一階、地下一階の鉄骨、鉄筋コンクリート建てで、客は出入りしない。一階に従業員の更衣室や休憩室、地下部分には地中約千五百メートルから温泉をくみ上げるポンプや温泉のタンクがあり、温泉をＡ棟に送りボイラーで加熱、施設で利用している。

　Ｂ棟では、くみ上げた温泉に混入した天然ガスを「ガスセパレーター」と呼ばれる装置で分離していた。ガスは換気扇などで屋外に放出する仕組みになっており、管理会社がセパレーターを定期的に点検していた。検知器が異常を感知すると、Ａ棟の事務所でブザーが鳴るようになっていたが、事故前に作動したかどうかは不明という。

　環境省によると、一九九○年以降、温泉の掘削作業中などにガス爆発、火災が起きた例は四件あるが、営業中の施設での報告例はないという。

　シエスパは「ユニマットビューティーアンドスパ」（東京都港区）が二○○六年一月に開業。Ａ棟は地下一階、地上九階建てのビルに天然温泉の入浴施設や飲食店がある。

　現場はＪＲ渋谷駅の西約五百メートルにあるホテルや飲食店が立ち並ぶ地域で、近くには東急百貨店がある。

北海道新聞　引用